サスペンションアーム 構造変更通知書 with 3UP 車検制度への取り組み

3UPシリーズの続きです。

S15/R34 Drift SUSPENSION kit by 3UP 共同開発車高調キットシリーズ

今回は過去にもご紹介させていただたサスペンションアーム。

キャンバーアーム、トーロッド、テンションロッドなどがメジャーどころ。

http://silkroad-jp.com/portfolio-2/footwork/foot_arm

自動車部品には大まかに4種類あると(個人的に)思っています。

〇消耗品(ほぼ条件無しに交換OK) ウォッシャー液、エンジンオイルエレメント、ブレーキパッドなど

〇指定部品(一定の条件下で交換OK) 以下で説明します~

〇重要保安部品(基本NG) これが今回の本題

〇その他グレー(規定に含まれていないもの) 都度確認必要ですね。

指定部品は、車高調やフェンダー、ルーフキャリアなどで、一定の条件さえ満たせば合法。基本手続きが不要なものが大半。装着したその日から問題ナシ。

当社の9mmワイドフェンダー、車高調などは指定部品なので、手続きナシに車検対応(継続)です。以下が大まかな説明。

http://www.aiseishin.jp/qa/shitei.pdf#search=%27%E6%8C%87%E5%AE%9A%E9%83%A8%E5%93%81%27

で、今回主役のアームは交換NGの重要保安部品なんです。

アームはクルマにとって非常に重要な役割を持っています。手押し車、一輪車、三輪車をイメージすればわかりますが、ガタガタして乗り心地が悪い。アームが無いからです。アームは路面の凹凸からの激しい衝撃をてこの原理でいなしてくれています。それ以外にも、タイヤを路面にしっかり押し付けたり、タイヤを適切な位置に修正し、安定操縦に役立っています。

「重要保安部品」は、クルマの基本性能である、走る、曲がる、止まるという能力に支障や大きな影響を及ぼしたり、火災に関わるような重大な事故に直結してしまう部品のことであり、原則、純正以外はNG。

こんなに車高が低くても、最低地上高を守っていればOKなのに、ワタシの営業者のノーマルのアクアにアームが一つ入っていれば車検NGなのです。

解消する方法として、構造変更通知書の発行をして欲しい、と3UPの三上さんからリクエストされたのでした。

当社のアームを購入する際、車検証のFAXがあれば¥3,000で上記書類を発行出来ます。車検時に提示していただければ、構造変更したうえで車検を受けていただけます。構造変更、つまりマル改された車検証になります。(他のパーツや改造方法、ボディの状態による影響はご容赦願います)

有償の書類が無くても、本来はOKです。というのも、破壊検査書が添付されているからです。こちらは原則無料です。公的な検査書で純正のアームと当社のアームを破壊し、その強度を比較証明したものです。日本でアームを製造されているメジャーなメーカーさんなら大抵持っておられます。

当社はこの書類は何十年間も発行しており、車検時の構造変更に使える事は理解しておりました。けれど、最も重要なことは、私たち自身が強度を確認し、安全性を確認することが大きな理由。

この書類はあくまで検査結果にすぎず、車検時には、上記のような書類を陸運局の指導のもと、何枚も製作する事になります。

そして書類が出来ても「事前審査」が必要になります、車検とは別の日に、この部品単体の強度の審査を受ける事になります。しかも絶対通るという保証はありません。

こうなると、アームの審査を受けるだけで、時間も費用もかかります。腕利きショップ様なら、審査は確実に通るとしても、陸自に最低でも二回行き、合格通知がでるまでの1~2週間、クルマを預かった状態になりますから、コストがどんどんかさみます。

「改造申請は自分でも出来ます。でも、陸運局に行く移動時間と待ち時間で一日が終わってしまう事もザラ。これをさらに一日追加は痛い。費用コストがかさむことは、お客さんも負担が増。1通¥3,000で、それが解消されるのは本当に助かるんです」

まさに目から鱗。商品を売る事だけでなく、その後の取り付けの事情を考えれば、絶対にあったほうが良い書類。この提案をいただいてから、現在は大半のアームにはこの事前審査通知書の発行を対応しました。

45年前の創業時はラリー、ダートラ専門ショップ。パーツは競技専用部品で当然、そんな意識がどこかに残っていたのかもしれません。昔はパーツを交換が違法。ダウンサスもアウト、ショックアブソーバーの交換もダメ、純正がフェンダーミラーだったので、それをサイドミラーに交換もダメ!車検対応にする方法が無かった時代。

(キノクニの社長の体験談より)

http://silkroad-jp.com/silkroad/40th-anniversary-talk

でも、現在は法律も随分かわり、ハードなサーキットユーザーだけでなく、一般道もチューニングやドレスアップを愉しむ風潮が広まってきました。これは欧米の自動車先進国も同様、大切な文化の発展の一つ。ならば、当社もサーキット専用品だけでなく、一般道でも安心して使えるパーツを増やすべき、そういう意識の変化のきっかけになった提案でした。

当社のロングセラーのAE86リアロアアーム調性式も、この書類が非常に重要。なぜなら、純正を溶接加工すると、さらに構造変更が難しくなるんです。純正を溶接加工した場合は、溶接部分の強度証明をしなくてはならないのです。一つの例とすれば、溶接した人の技術を証明するようなものとなります。

当社製のこのアームならば、通知書が発行できますから、そんな心配もありません。

こういった陸運局の基準というのは、厳しくなるイメージが強いですが、そうでもありません。40年前は違法だったサイドミラーは現在OKですし、車高調だって20数年前は違法だったのが、指定部品扱いです。この日産車用のハイキャスキャンセラーも、数年前まではアームと同じ扱いで、構造変更の対象だったのに、今は交換してもお咎め無し。普通に車検OKの部品となりました。

クルマや環境の進化に合わせて、こういったルールが改正されていっており、個人的には陸運局さん、がんばってるな~って感じです。

たまたま年齢が同じで気があった3UPさんと、10年近くこうやって家でご飯を食べさせてもらい、遅くまで色んな話をしている中でこういうお話が出てきます。シルクロードがこのデジタル時代でも、営業マンを全国にアナログ的に廻らせているのは、こういうことがあると社長や古い社員さんたちは肌で知っているからなんでしょうね。

ジムニー専門店 IMPS x パイオニアスピリット

先日、ジムニー専門店のIMPSの関根社長からこんなお話をしてもらいました。

「車検対応品を作ることはとても大切。でも、非対応品だって同じくらい、この業界にとっては重要だよ」

と教えてもらいました。

一切の改造が認められなかった3~40年前、当時のルールにおいて違法改造をしていた人たちがいたからこそ、この業界があるということ。その流れの一つがドリフト。今はJAF公認もあり、世界でも日本発のモータースポーツとして絶大な人気と地位を気付いているこの競技だって、もとは違法。

だから違法を許すとか、やっていいということではないけれど、

「シルクロードさんも、今、車検対応品が売れるからといって、車検対応品を作ることが主になっちゃうと、志がさがっちゃうよ。大切な事は、イイ部品を作ることでしょ。車検対応品をおっかけるなら、自動車メーカーに負けちゃうよ。僕らは自動車メーカーが真似したくなるような商品を、先取りしてきた業界でしょ?」

このニュアンスはこの業界人同士なら分かると思うのです。

40年前、サイドミラーは違法だったのに、今はサイドミラーは当たり前。車高だって、自動車メーカーがわざわざローダウン仕様を設定したり、ダウンサスやサスキットを販売しています。関根社長がおっしゃりたかったことは、パイオニアスピリットを忘れるな、ということに尽きると思いました。

この時代にあって、あからさまに違法なものをストリートでどうぞ、ということはありえません。けれど、そこに固執しすぎることは私たちの存在価値を下げてしまう。なかなか重い課題をいただいたな、でも同時に愉しいな、と思いました。

ということで、3UPさんがまたオモシロい提案をしてくださることでしょう(笑)

そうこういっている今も、新たな提案を他のショップ様からいただきました。次回は、軽自動車のエキマニの新車種設定、ご紹介です!